半歌仙「成層圏に凧」

7月のはじめに、2年ぶりに連句を巻きました。

わたしの父の病気、他界があり、その後もあわただしさが続いていて、なかなか連句の席を設けることができずにいたのですが、ようやく少し落ち着き、久しぶりに巻いてみたいなあ、といつものメンバーにお声がけしました。お目にかかるのも久しぶりの方が多かったのですが、始まってみるとなごやかで、とても楽しい会となりました。

さらに、時間が経つなかで、おめでたいことももろもろあり……いちばんは、メンバーのやんさんがご結婚されたこと。詳細は内緒ですが、由穂さんの作った発句にはそのお祝いの意味が込められています(読む人が読むとわかる笑)。お祝いの句からスタートし、日常から幻想を通り、恋の座に。一転して「東北でよかった」発言を受けた時事句へ。

この半歌仙の山場は「旅の地図」の句から花までの流れでしょうか。旅の地図から、成層圏へ、肩車されながら見た花の思い出へ。地球の上をめぐるような美しさがありました。

馴染みのメンバーのほか、新しい人もふたり。いろいろあって長らく中断していましたが、そのあいだにも時は流れるし、出会いもあり、始まりもある。世界は続いていくんだなあ、と思いながら一巻を終えました。また少しずつ機会を設け、巻いていけたら、と思っています。

 

半歌仙 成層圏に  捌・ほしおさなえ

 

夏空や岩波千の色となる   由 穂
 となりの家の軒に風鈴    さなえ
本を巻く薄紙はがす手をとめて 律 子
 買ったばかりのスニーカー履く 亮
原材料月のお菓子を作る人   や ん
 ほおずき灯る夕方の道    水 色
電話する理由を探す霧時雨    猫
 わたしの部屋にコオロギがいる  亮
頬なでるふたりで摘んだ芒の穂  穣
 されこうべ抱く妻あどけなし   さ
「東北でよかった」今も蝦夷なり  由
 やまとしずくをトクトクとつぐ  律
冬の月歩く速さでついてくる    水
 転校生は鯨兄弟         や
旅の地図この世は全て疑問形    猫
 成層圏に凧を浮かべる      水
肩ぐるまされて眺めた街の花    や
 霞む工場をサーカスが行く    穣

 

2017年7月1日 於・ライフコミュニティ西馬込

半歌仙「キリンの夢」夏の連句会作品・1

7月12日(日)、夏の連句会を行いました。
2座に分かれたうち、わたしの方の座の作品です。

若い俳人、歌人、詩人と小学4年生の娘が集まったこの座。瑞々しい句が並びました。
この日の会場は目黒区民センターのなか。ここは複合施設で、外には大きなプールがあります。駅から目黒川沿いの小道をやってくると、プールの横を通ります。発句もプールの句が多く、「青色のプール」が夏を感じさせる由穂さんの句を取りました。「風鈴」、「図書室の光る文字」とまぶしい句が続き、一転、翳りと強さを放つ「思春期なんて好きじゃなかった」。それをほどくような「キリンの夢」。若さの持つまぶしさ、苦さ、不確かさがぎゅっと詰まったような表六句となりました。
表の最後「しゃけおにぎり」から世界が少しずつ広がっていきます。「おにぎり」から「包みほどいてゆく」のつけあいでは、父の姿の厚みが描かれますが、「黒髪」がつくことで「包み」は「黒髪を包むもの」へと変容し、怪談の匂いを漂わせます。しかし「怪獣の気持ち」がつき、「黒髪」は包まれている「もの」ではなく、記憶のなかの黒髪の人となり、さわやかな恋の追想へと変わっていきます。そして情熱的で破壊的な恋をよむ「少女は燃えやすい」は、次につく「被爆者、被曝者」によってまったく別のものに読み替えられていきます。このあたりの緊張感のある起伏はスリリングでおもしろかったです。
少し落ち着く「シダの化石」、しんとした「冬の月」、「あなぐま」、「金平糖」、「入学」ときらきらした感覚が散りばめられた句が並んだあと、生きることの重みを感じさせる「残花」。「明日に向かって生きる」という言葉が、この半歌仙にあふれる若さを引き受けてくれているように思いました。
人は生まれ落ちた瞬間から死に向かっていくもの。若くても死を背負っているのは変わらない。むしろ若いころは生まれる前の暗い記憶の残像が焼き付いているのかもしれません。光と闇が交錯するような、夏にふさわしい鮮烈な一巻となりました。


半歌仙 キリンの夢  捌・ほしおさなえ

 

青色のプールを通り過ぎる道   由穂

 さららさららとひびくふうりん  しおね

図書室の光る文字たちゆれていて   猫

 思春期なんて好きじゃなかった  玲 未

月の裏ぼくはキリンの夢を見る   れ な

 しゃけおにぎりを食べる父さん    猫

盆燈籠包みほどいてゆく手つき     由

 むかし愛した人の黒髪      さなえ

君の詩があふれて怪獣の気持ち     れ

 少女はもっと燃えやすいから     玲

被爆者も被曝者もいる国であり     由

 シダの化石にそっとふれてる     猫

冬の月よごれちまった階段に      れ

 あなぐまたちがねむりはじめて    し

これからは金平糖の時代です      玲

 入学したら何組になる?       し

残花死は明日に向かって生きること   由

 だあれもいない生家のどやか     さ

2015年7月12日 於・目黒区民センター社会教育館

夏の連句会を開きます

ぎりぎりになってしまいましたが、夏の連句会を開きます。
今回は会場が変わりまして、目黒区民センターとなります。
目黒駅から徒歩10分くらいのところです。

日時 7月12日(日) 13時から18時くらいまで
会場 目黒区民センター社会教育館 第6研修室
http://www.city.meguro.tokyo.jp/shisetsu/shisetsu/kyoiku_shisetsu/kumin_center/index.html
会費500円

先着10名様。
参加ご希望の方は、
・お名前
・連絡先
・年齢
・連句(短歌俳句)経験
をお書き添えのうえ、下記までご連絡ください。件名に「連なる楽しみ」とご明記ください。
HQK03267@nifty.ne.jp

当日は、筆記用具、(あれば)歳時記をお持ちください。


*夏休み期間中に大きめのワークショップを、と考えていたのですが、もろもろあって開催がむずかしくなってしまいました(それで今回もこじんまりとした会になりました)。
ですが、近々、連句会やワークショップ開催に関するちょっと大きなご案内ができそうです。
詳細決まりましたら、またこちらでお知らせいたしますね!