半歌仙「檸檬爆弾」

3月3日、ひな祭りの日に池上梅園で半歌仙を巻きました。

ちょうど梅の見ごろで、梅園も梅を見る人たちでにぎわっていました。赤、白、さまざまな梅が咲きそろい、とてもきれいでした。

咲く瞬間の梅一輪の緊張が伝わってくるような句からはじまり、第三で舞台はなぜか工事現場へ。図書室、入道雲、猫の足とかわいらしくファンタスティックな句が連なったあと、丸眼鏡から大人の恋へ。

その後は、けいとだま、仮想通貨、新宿のビル、とめまぐるしい展開になりました。春からはじまる半歌仙は、春を2回入れなければならないのでいつもあわただしくなります。今回は、途中でこのままでは冬を入れられない!と気づき、けいとだま(冬)から雑をはさまず一気に秋に移ることになってしまいました。

百年前の妻から海市、花までの生と死を感じさせる流れが今回の山場だったように思います。

ちなみに、今回は久しぶりに娘(小6)が参加しました。受験まで塾通いでなかなか参加できずにいましたが、今回はずいぶん成長し、以前のようなかわいい句とともに、少し大人っぽい句も作っていました。

花の句のあたりで閉園時間となり、その後は近くの古民家カフェへ。雛人形の置かれた二階の座敷で挙句をつけ、春の日にふさわしい、淡い夢のような一巻となりました。

 

半歌仙 檸檬爆弾  捌・ほしおさなえ

 

紅梅のぎゅっと瞑ってからひらく  ゆほ
 雛のあられを照らすぼんぼり    さなえ 
朧月工事現場に声のして       なつみ
 木材たちとあそぶやくそく     しおね
放課後の図書室のドアそっと開け   水色
 入道雲は洗濯屋さん        やん
打ち水を避けて通りぬ猫の足     月
 丸眼鏡からレーザービーム     や
後方のほくろの数をかぞえおり    ゆ
 ピタゴラスでも解けぬ三角     水
けいとだまぼくも一緒にじゃれている し
 仮想通貨にときめいた秋      さ
新宿のビルのガラスを渡る月     な
 「死因は檸檬爆弾」とあり     や
写真館百年前の妻を見て       月
 人々海市より戻りくる       ゆ
花光る魂はいま何色か        し
 のどかに集う古民家のカフェ    月

 

2018年3月3日 於・池上梅園

半歌仙「カズオ・イシグロ」

1月6日、半歌仙を巻きました。

松の内ですので、発句は新年です。新年早々に集まって連句を巻く、ということはあまりないので、新年の句は新鮮でした。

「大吉を大盤振る舞い」というなんともおめでたく、はなやかな句からのスタート、犬の子を追いかけたり、焼印を押したり、月が人形のまぶたに沈んだり、どことなく音楽を感じさせる表六句となりました。

裏に入っても、ビスコッティから始まる恋の座、「おもちゃの国へ帰ります」「夏至の五限は休講にせよ」など、美しいイメージの句が続き、ピアノソナタ、カズオ・イシグロへ。この日はカズオ・イシグロの話題が何度も出て、そのたびに句にしようとしたものの、なかなか形にならず、ここで眼鏡が登場したことでようやくおさまったのでした。

名前から北海道の廃線へ、そして「足踏みして待つ」という、若さ、憧れ、焦燥を感じさせる素敵な花がつきました。

美しいイメージが音楽のように流れて行く、はなやかな一巻になりました。これもお正月の力でしょうか。

 

半歌仙 カズオ・イシグロ  捌・ほしおさなえ

 

大吉を大盤振る舞い初御籤    水色
 あちらこちらで揺れる繭玉    さなえ
犬の子を転がるように追いかけて  なおこ
 Pの焼印どら焼きに押す     亮
人形のまぶたの中に沈む月     胡桃子
 節くれた手で障子貼る父     な
栗爆ぜて童どこまで行ったやら   さ
 ビスコッティを君と分け合う   水
ていねいにあなたのパジャマ畳む朝 亮
 骨壷しんと日を浴びている    さ
夜中にはおもちゃの国へ帰ります  な
 夏至の五限は休講にせよ     亮
月涼しピアノソナタを聴きながら  水
 眼鏡を外すカズオ・イシグロ   亮
漢字では浮かばぬ名前並びをり   な
 北海道の廃線に春        さ
花冷えや足踏みしつつ待っている  胡
 雄雌のない蝶を探して      仝

 

2018年1月6日 於・ライフコミュニティ西馬込

半歌仙「秘密基地」

10月終わりに、秋の連句会を開きました。

秋、といってももう晩秋。ぎりぎり滑り込みです。

街のあちこちにハロウィンのカボチャが飾られている時期。

発句はたくさん出た中から、ひときわ光るハロウィンかぼちゃの句を選びました。

しかしこの句が面白すぎて、第三まで苦労してしまい、もっと無難な句を取ればよかったか、とちょっと不安に。

おばけかぼちゃが光ってしまったので、月をどうしよう、とも思いましたが、せっかく面白い句が出たのだから、と縁を信じて突き進みました。

四句目に光らない、けれどもやわらかく、新鮮な月が出て、そこからするする滑り出しました。

裏に入って、恋から時事句、サンタクロースまで、これまでにない雰囲気の句がたくさん出て、びっくりしたり笑ったり、、、

「湖に」から花までの三句も、怪しく不穏な感じから暖かさに趣を変えていく、緊張感のある連なりになりました。

終わってみると、これまでになかった斬新さがあるなあ、やはりおばけかぼちゃでよかったのだ、と感じました(笑)。

 

半歌仙 秘密基地  捌・ほしおさなえ

 

夕暮れにおばけかぼちゃの目が光る  水色
 霧に消え去る蝶タイの猫       さなえ
秋雨の音が眠りに落ちてきて      ゆほ
 抱えた膝は月に似た色        胡桃子
朝食の卵は「いっこ?」「にこ」と割る やん
 子どもの群れが傘ふりまわす     胡
唐突に京都の空に舞いたくて      月
 とろけた瞳、祭り、水飴       もん
「今日いいよ」ふたりで行った秘密基地 仝
 あのひとの名は思い出せない     太陽
リベラルの意味を訊ねる十六歳     水
 これがほんとの駆け込み乗車     ゆ
寒月は空家の窓に火を灯し       や
 ブレイク中のサンタクロース     月
湖に沈めるならば君かなあ       胡
 血はあたたかに次へ流れる      や
花びらは人の記憶のなかに散り     ゆ
 藤棚の下佇んでいる         太

 

2017年10月28日 於・池上会館