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半歌仙「キリンの夢」夏の連句会作品・1

7月12日(日)、夏の連句会を行いました。
2座に分かれたうち、わたしの方の座の作品です。

若い俳人、歌人、詩人と小学4年生の娘が集まったこの座。瑞々しい句が並びました。
この日の会場は目黒区民センターのなか。ここは複合施設で、外には大きなプールがあります。駅から目黒川沿いの小道をやってくると、プールの横を通ります。発句もプールの句が多く、「青色のプール」が夏を感じさせる由穂さんの句を取りました。「風鈴」、「図書室の光る文字」とまぶしい句が続き、一転、翳りと強さを放つ「思春期なんて好きじゃなかった」。それをほどくような「キリンの夢」。若さの持つまぶしさ、苦さ、不確かさがぎゅっと詰まったような表六句となりました。
表の最後「しゃけおにぎり」から世界が少しずつ広がっていきます。「おにぎり」から「包みほどいてゆく」のつけあいでは、父の姿の厚みが描かれますが、「黒髪」がつくことで「包み」は「黒髪を包むもの」へと変容し、怪談の匂いを漂わせます。しかし「怪獣の気持ち」がつき、「黒髪」は包まれている「もの」ではなく、記憶のなかの黒髪の人となり、さわやかな恋の追想へと変わっていきます。そして情熱的で破壊的な恋をよむ「少女は燃えやすい」は、次につく「被爆者、被曝者」によってまったく別のものに読み替えられていきます。このあたりの緊張感のある起伏はスリリングでおもしろかったです。
少し落ち着く「シダの化石」、しんとした「冬の月」、「あなぐま」、「金平糖」、「入学」ときらきらした感覚が散りばめられた句が並んだあと、生きることの重みを感じさせる「残花」。「明日に向かって生きる」という言葉が、この半歌仙にあふれる若さを引き受けてくれているように思いました。
人は生まれ落ちた瞬間から死に向かっていくもの。若くても死を背負っているのは変わらない。むしろ若いころは生まれる前の暗い記憶の残像が焼き付いているのかもしれません。光と闇が交錯するような、夏にふさわしい鮮烈な一巻となりました。


半歌仙 キリンの夢  捌・ほしおさなえ

青色のプールを通り過ぎる道   由穂

 さららさららとひびくふうりん  しおね

図書室の光る文字たちゆれていて   猫

 思春期なんて好きじゃなかった  玲 未

月の裏ぼくはキリンの夢を見る   れ な

 しゃけおにぎりを食べる父さん    猫

盆燈籠包みほどいてゆく手つき     由

 むかし愛した人の黒髪      さなえ

君の詩があふれて怪獣の気持ち     れ

 少女はもっと燃えやすいから     玲

被爆者も被曝者もいる国であり     由

 シダの化石にそっとふれてる     猫

冬の月よごれちまった階段に      れ

 あなぐまたちがねむりはじめて    し

これからは金平糖の時代です      玲

 入学したら何組になる?       し

残花死は明日に向かって生きること   由

 だあれもいない生家のどやか     さ

2015年7月12日 於・目黒区民センター社会教育館

夏の連句会を開きます

ぎりぎりになってしまいましたが、夏の連句会を開きます。
今回は会場が変わりまして、目黒区民センターとなります。
目黒駅から徒歩10分くらいのところです。

日時 7月12日(日) 13時から18時くらいまで
会場 目黒区民センター社会教育館 第6研修室
http://www.city.meguro.tokyo.jp/shisetsu/shisetsu/kyoiku_shisetsu/kumin_center/index.html
会費500円

先着10名様。
参加ご希望の方は、
・お名前
・連絡先
・年齢
・連句(短歌俳句)経験
をお書き添えのうえ、下記までご連絡ください。件名に「連なる楽しみ」とご明記ください。
HQK03267@nifty.ne.jp

当日は、筆記用具、(あれば)歳時記をお持ちください。


*夏休み期間中に大きめのワークショップを、と考えていたのですが、もろもろあって開催がむずかしくなってしまいました(それで今回もこじんまりとした会になりました)。
ですが、近々、連句会やワークショップ開催に関するちょっと大きなご案内ができそうです。
詳細決まりましたら、またこちらでお知らせいたしますね!

半歌仙「海鏡(つきひがい)」(春の連句会作品)

4月26日、春の連句会を行いました。

今回の連衆は少し慣れてきた人ばかり。
捌き養成の目的もあり、式目をおさらいしながら半歌仙をゆっくり進めました。

発句は、小学4年生になったばかりの娘の句をとりました。尻尾をゆらし元気に泳ぐおたまじゃくしたち。春のむずむずするような躍動感があります。脇はその背景。おたまじゃくしの尾の細かな動きを受け、大きくゆらゆら揺れる柳を配してみました。第三は一転して室内へ。四句目の「タルトタタン」は、先ごろ刊行された亮さんの歌集『タルトタタンと炭酸水』から。しばし亮さんの歌集の話題で盛り上がりました。タルトタタンはりんごのケーキですので、季節としてはいちおう秋かな、ということに。そのまま秋の月に。ムーンライトシャドウはよしもとばななさんの小説のタイトル。よしもとばななさんをテーマに卒論を書いたばかりの猫さんがつけました。
しばらく秋の句が続き、裏にはいって、夏の恋。ふわふわした子くらげから連想し、いま話題のドローンの句へ。静かな冬の月、人のぬくもりを感じさせる着膨れ、身近な体験とも人生の一景とも取れる「曲がるべき角知らぬまま路地を行く」。人生の不確かさを包み込むような「海鏡(つきひがい)」。海鏡とは貝の一種で、春の季語です。そして、夜の坂にいる母娘の花の句。このあたりのあたたかなつながりがこの巻の山場だったかな、と思います。全体に人や生き物の息遣いや体温のようなあたたかさを感じさせる一巻となりました。

半歌仙 海鏡(つきひがい)  捌・ほしおさなえ

池の中おたまじゃくしが泳ぐころ    しお
 柳の糸の垂れる石垣          さなえ
日曜日珈琲豆を挽いていて         亮
 タルトタタンの焼き上がり待つ     なおこ
ムーンライトシャドウななめに差してをり  猫
 秋雨に濡れ配達夫来る         景 子
小窓から木犀の香を探す朝          亮
 かわいい鬼がぴょんと生まれた       さ
夕立に相合傘して帰ろうか          猫
 触り損ねた日焼けした肩          な
子くらげになった気分でうかんでる      し
 ゆれるドローン官邸の上          猫
冬の月虚空にきしむ櫂の音          景
 いつにもまして着ぶくれている       亮
曲がるべき角知らぬまま路地を行く      な
 海鏡(つきひがい)には風満ち満ちて    景
夜の坂母といっしょに花見する        し
 あたたかくって泣いてしまった       さ

 2015年4月26日 於・大田文化の森


*連衆の景子さんが撮影されたお写真です。



 
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